2019年2月16日 東京 http://www.tokyo-np.co.jp/article/saitama/list/201902/CK2019021602000147.html
県内が会場となる今秋のラグビーワールドカップ(W杯)や来年の東京五輪・パラリンピックに向け、県は二〇一九年度、完全禁煙に取り組む飲食店が多数を占める区域を「受動喫煙防止対策推進区域」として認証する新制度を始める。競技会場の最寄り駅周辺などを想定しているものの、小規模店には完全喫煙への抵抗感が強いのが実情。強制力はないため、実効性のある対策には、地元の理解が不可欠だ。
昨年七月に公布された国の改正健康増進法によって、飲食店は二〇年四月から受動喫煙対策が義務化される。ただ、喫煙専用室の設置が認められている上、既存の小規模飲食店では喫煙が可能なままだ。
東京都や千葉市では、同法よりも厳しく「従業員がいる飲食店は面積にかかわらず原則屋内禁煙」とする罰則付き条例をつくっているが、県では条例ではなく、より厳しい基準を満たした店を認証する方法で受動喫煙対策を推進する。
県の新制度では、対象には「施設」と「区域」の二種類があり、「屋内完全禁煙」の施設には認証書やステッカーを配布。県ホームページなどでPRする。
「区域」は半径数百メートルほどの想定で、「区域内の飲食店の多くが完全禁煙としている」などが要件。県はラグビーW杯や五輪会場の最寄り駅である浦和美園駅、さいたま新都心駅、熊谷駅の周辺を「先行モデル区域」にしたい考えだ。
県は新年度の早期からの実施を予定していて、新年度予算案にも関連費用を盛り込んだ。しかし、市側からは完全禁煙の実現は「ハードルは高い」という声も上がる。
ラグビーW杯の会場の一つとなる熊谷市は昨年十月、熊谷駅周辺と会場までの沿線約四キロの飲食店にアンケートを実施。回答のあった百二十三店舗のうち、全面禁煙を実施しているのは三十七店舗にとどまった。
残りの店舗のうち、三分の二が全面禁煙を「難しい」と回答。スナックなどからは「酒とたばこはセットのようなもので、売り上げが下がる」などと消極的な意見が出た。市の担当者は「対策は考えていきたいが、古くからの小さな飲食店が多い繁華街では難しい」と語る。
県の担当者は「地元の方々に十分に説明していく必要がある。国内外から集まる人たちが健康への影響を気にせずに安心して過ごせるようにしていきたい」と話している。