2025年12月19日 07時46分 東京新聞 https://www.tokyo-np.co.jp/article/457034
マンションなど近隣住宅間で、たばこの煙を巡るトラブルが後を絶たない。受動喫煙の法的規制は公共空間で先行しているが、国は住宅での被害防止も見据え、健康増進法を見直すなど対策に本腰を入れるべきだ。
国土交通省は10月、分譲マンションの管理規約のひな型となる標準管理規約を改正し、ベランダを含む「共用部分」を禁煙にできるとの項目を併記した。たばこに関する言及は初めて。法的拘束力はないものの、マンションなどで今後、管理規約の見直しが進み、共用部分の喫煙に関する項目が盛り込まれることも予想される。
ただ、現実には「専有部分」である居室の窓や換気扇の排気口などから流れる煙が、周囲に深刻な被害を生む事例も多い。
このため、居室での喫煙を禁止・制限する規約改正を行う集合住宅がすでにあるほか、当初から全面禁煙をうたった新築のマンションや公営住宅も登場している。
標準管理規約見直しは一歩前進だが、遅きに失したと言わざるを得ず、さらなる改正が必要だ。
たばこは、がんや肺疾患、心臓疾患など多くの病気の原因となり日本国内では喫煙に関連して年間10万人以上が死亡するとされる。周囲に流れる副流煙の高い有害性も明らかになっている。
健康増進法は、喫煙時の周囲の受動喫煙に対する配慮義務を定めている。しかし近年、職場や飲食店などで禁煙化が進む一方、コロナ禍で在宅勤務が増加したため、近隣住宅からの煙害が増えているとの指摘がある。
受動喫煙問題に詳しい弁護士への被害相談も多く、訴訟で喫煙者に賠償命令が出た例もある。住宅での煙害を訴える当事者の会も立ち上がっている。
住まいは、最も安心して過ごせる生活空間であるべきだ。煙が恒常的に流れ込んできたり、健康被害が生じたりすれば、重大な人権侵害になり得る。半面、周囲に配慮した喫煙者とのトラブルが先鋭化することは望ましくない。
国は健康増進法に基づき、望まない受動喫煙を2032年度までに解消する基本方針を掲げる。それが「絵に描いた餅」に終わらぬよう、住宅での喫煙配慮義務に実効性を持たせるとともに、行政相談の対象となる仕組みを検討してはどうか。喫煙のルールは時代に即した見直しが必要である。
参考 マンション標準管理規約(令和7年10月17日改正)
マンション標準管理規約改正 (単棟型)(団地型)(複合用途型)に共通する
【喫煙に関するルール】
⑥ 喫煙に関しては、共用部分においてそれを認める、認めない等の規定、認める場合におけるその場所など
遵守すべき事項、これらの事項に違反した者に対する措置等について、使用細則で定めることは可能である。
また、他の区分所有者(団地建物所有者)及び占有者との円滑な共同生活を維持する観点から、周囲の状況
に配慮した方法で喫煙することが望ましく、使用細則において、そうした規定を盛り込むことも考えられる。