持論 対応が国の信用左右する/受動喫煙防止

2017年6月27日(火) Web東奥 http://www.toonippo.co.jp/shasetsu/20170627026347.asp  

 

 政府は受動喫煙防止策を強化する健康増進法改正案の国会提出を先送りした。飲食店での喫煙規制について、自民党が厚生労働省の改正案に反対し、議論が行き詰まったためだ。2020年に東京五輪・パラリンピックを控え、今秋の臨時国会での改正法成立を目指すが、再び調整が難航する可能性もある。

 近年の五輪開催国では、世界保健機関(WHO)と国際オリンピック委員会(IOC)の合意に基づき、罰則を伴う喫煙規制が導入されている。対応が遅れれば日本の信用低下は免れない。関係者は危機感を持って事態の打開に努めてほしい。

 厚労省と自民党の最大の争点は、例外として喫煙を認める飲食店の線引きだ。厚労省が3月に公表した改正案は、屋内禁煙を原則とし、飲食店などは喫煙室を設置してもよいとした上で、30平方メートル以下のバーやスナックに限って喫煙を認める内容だった。

 自民党ではたばこ議員連盟(野田毅会長)を中心に反発が広がり、150平方メートル以下の飲食店は店頭に「喫煙」や「分煙」と表示すれば喫煙を認めるという対案をまとめた。厚労省案と比べて面積で5倍の開きがある上に、すべての業態の飲食店が含まれ、喫煙規制が大幅に後退してしまう。

 厚労省は激変緩和措置として、数年間は自民党案に盛り込まれた飲食店での喫煙を特例として認め、その後は厚労省案に移行するという譲歩案を示したが、自民党は受け入れず、協議は袋小路に入り込んでしまった。

 自民党案の論拠の一つは、分煙で健康被害を防げるという考え方だが、WHOは受動喫煙防止の有効な対策は屋内の全面禁煙しかないと明言し、分煙や喫煙室を退けている。厚労省案ですら緩やか過ぎて、世界標準には達していない。

 もちろん、たばこを吸う人への配慮も忘れてはならない。屋外での禁煙が広がっているのに加えて屋内でも禁煙が進むと、公共空間でたばこを吸える場所が少なくなる。厚労省には公共の喫煙所を拡充するなどの対策も考えてもらいたい。

 受動喫煙対策で、厚労省が提示した数年の移行期間を設ける譲歩案は現実的であり、自民党にも受け入れ可能ではないか。東京五輪まで残された時間は少ない。次期国会で改正健康増進法を成立させるよう合意を目指すべきだ。