「分煙では効果ない」日本が「屋内全面禁煙」目指すべき根拠
 
-WHOが塩崎厚労相に積極的な働きかけ

2017年4月11日 東洋経済online 「ハフィントンポスト」編集部  http://toyokeizai.net/articles/-/167094  

 

たばこの受動喫煙対策をめぐり、世界保健機構(WHO)のアサモア・バー事務局次長らが4月7日、厚生労働省で塩崎恭久大臣と面会した。バー次長らは塩崎氏にたばこの影響に関する調査報告書や手紙を渡し、東京オリンピック・オリンピックに向けて屋内禁煙の徹底を求めた。

面談では、バー事務局次長が塩崎大臣に公共の場での禁煙を求める手紙を手渡し、「五輪を機会にさらに強いタバコ対策を願っている。日本にはリーダーシップをとってほしい」と訴えた。

塩崎氏は面会後、3月に公表した受動喫煙対策の厚労省原案について、「今国会の法案提出に向けて努力しないといけない。1度も正式に説明していないので、厚生労働部会で私たちの考えを聞いてもらいたい」と、議論の場を早期に設けたい考えを示した。

五輪に向けて、「妊娠している女性や子ども、海外から来る人らを始め、8割いる喫煙者に対して、意図しない受動喫煙にあわないようにしていきたい」と述べた。

 

■WHO部長「五輪は国レベルでアクションをとるきっかけ」

面会が終わると、WHOのダグラス・ベッチャー生活習慣病予防部長が記者会見を開いた。日本や世界のたばこの禁煙政策の現状などについて説明し、屋内の全面禁煙の重要性を訴えた。

WHOによると、2014年時点で、世界49カ国が、屋内の公共の場所が全面禁煙となっている。一方日本は、法律で喫煙を禁じている屋内の公共の場がなく、受動喫煙政策の普及状況を示したWHOの評価基準で、4段階中で最低ランクに位置付けられている。こうした日本の現状を、ダグラス部長は「時代遅れだ」と指摘した。

 

厚労省が勧める分煙型の受動喫煙対策については、同じくレストランやバーを分煙にしたスペインで、受動喫煙の数値があまり改善されなかったことを挙げ、「部分的禁煙は効果がなく、受動喫煙を防ぐことはできない」と主張した。

全面禁煙の導入では、売り上げへの影響を懸念する飲食店もある中で、「たばこが経済に及ぼす影響について調べたWHOの研究で、全面禁煙を導入したアメリカや南アフリカなどの国々では、レストランの売り上げ減少はなかった」と述べ、悪影響が出る可能性を否定した。

むしろ、「レストランを訪れる人は、きれいな空気の中で食べたり飲んだりしたいという理由で、全面分煙をとても支持している。市場価値の研究では、完全禁煙にした方が価値が高まった」と強調した。

オリンピックを機に、ロシアや中国などの過去の開催国が禁煙に取り組んできた実績を踏まえ、「国レベルでアクションをとるきっかけになる。完全禁煙の法律を目指すべきだ」と述べた。

禁煙への反発で、日本で法整備が進まないことについて問われると、「他の国も同様の追及や疑問があった。経済や健康を守るため、完全禁煙の法律は当たり前になるべきだ」と話した。

 

■厚労省案は分煙型、自民議連は反発

厚労省が3月に公表した原案では、病院や学校が敷地内禁煙、福祉施設や公的機関は屋内の全面禁煙とする一方、飲食店や娯楽施設は喫煙室の設置を認め、分煙となっている。中でも、議論となった小規模のバーは、規制から外した。

これに対して、禁煙に反対する自民党のたばこ議連が、禁煙の導入を飲食店の判断に委ねることを盛り込んだ「対案」を提示。国会内で反発する動きが出ており、受動喫煙対策の法整備が滞っている。

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塩崎恭久・厚生労働相と面会するアサモア・バー事務局次長