五輪の受動喫煙対策、国の法律より厳しい都条例…「追随」「独自策」地域でずれ

2018年8月29日  yomiDR.  https://yomidr.yomiuri.co.jp/article/20180829-OYTET50052/ 

 

 2020年東京五輪・パラリンピックに向けた受動喫煙対策で、競技会場がある自治体間で足並みがそろっていない。東京都は、国の法律よりも厳しい規制を盛り込んだ条例を定め、それに追随する自治体がある一方、「検討中」とする自治体も多い。規制の違いで各競技場を巡る観客らが混乱することも懸念され、専門家からは「統一ルールが必要」との意見も出ている。

「体制整った」胸を張る小池都知事

 「東京五輪・パラを控える東京として、何とかその体制が整った」。都独自の罰則付き条例を成立させた6月都議会の閉会後、小池百合子知事は胸を張った。

 国際オリンピック委員会(IOC)は「たばこのない五輪」を推進し、過去の開催都市は厳しい規制を設けている。

 都条例は、店の規模にかかわらず従業員を雇っていれば原則禁煙とし、都内の飲食店の84%が規制対象となる。それでも、過去の開催都市より規制は緩い。一方、7月に成立した改正健康増進法は都条例よりもさらに規制が緩く、客席面積100平方メートル以下の既存の小規模飲食店は喫煙可。規制対象は国内の飲食店の45%にとどまる。

 「都と同じように開催都市であることを考えると、独自に条例制定が必要と考えた。開催エリアはある程度、統一的な(規制)方法になることが望ましい」。レスリングやフェンシング会場となる幕張メッセがある千葉市の熊谷俊人市長は7月、都条例と同様の条例案を9月にも市議会に提案し、20年4月の施行を目指す考えを示した。

 10年に条例を設けた神奈川県では、セーリングや野球などが行われる。条例では屋内原則禁煙とし、罰則もあるが、飲食店は分煙も選べるなど、国の法律よりも規制は緩い。県の担当者は「都条例も参考に見直しを検討する」としている。

独自条例を目指すとしながら…先送りも

 一方、独自条例を目指すとしながら、国の規制範囲にとどまる自治体や具体策が見えない自治体もある。

 自転車競技が行われる静岡県の川勝平太知事は4月に「都と歩調を合わせたい」としたが、8月に公表された条例骨子案は、飲食店の規制は国の法律に準じる内容にとどまった。担当者は「来年4月の施行を目指しており、スピードを重視した」と説明する。

 サッカー会場となる北海道は、昨年5月に道議会が受動喫煙防止条例の原案をまとめたが、一部道議の反対で議論は先送りされている。道の担当者は「道内ではまず、国の法律に基づいた対策を徹底することが必要と考える」と説明する。

条例を設けず既存の制度で…

 競技会場がある他の自治体では、条例を設けず、既存制度で対応する動きが目立つ。茨城県では「敷地内禁煙」「建物内禁煙」を達成した施設を認証する制度を導入し、500近い飲食店やスーパーが認証を受けてステッカーを掲示。県の担当者は「制度を広げることで、法律よりも厳しい対策になる」と期待する。

 宮城県も15年から同様の制度を開始。福島県も建物内禁煙の施設を「空気のきれいな施設」として認証する制度を16年から設け、国の法律と合わせて対策を進める。埼玉県も04年から認証制度を始め、制度の見直しを検討するという。

 五輪招致に都職員として関わった国士舘大の鈴木知幸客員教授(スポーツ政策)は「外国人観光客らにとって、自治体ごとにルールが異なるのは非常に不親切だ。大会組織委員会が音頭を取って国や自治体に呼びかけ、ルールの共通化などを図るべきだ」と指摘している。