たばこ、高血圧、肥満、糖尿病… 有無で健康寿命に格差、最大10年

2025年3月27日 5時00分 朝日 https://digital.asahi.com/articles/AST3S1CXST3SULBH00CM.html

 

 65歳の人が、その後の人生で日常生活を制限なく過ごせる期間を意味する「65歳健康寿命」は、喫煙や高血圧などの危険因子の有無で、男女ともに最大で約10年の差が生じる――。そんな研究結果を、東京科学大などのチームが専門誌で報告した。

 全国300地点で約7千人の健康状態を調べ、その後の死亡や日常生活動作(ADL)などの状況を20年間追跡した「NIPPON DATA90」という研究のデータを活用した。チームのメンバーらが取り組んできた研究だ。

65歳からあと何年、を推計

 これをもとに、血圧、肥満、喫煙、糖尿病のそれぞれの状況によって、65歳の時点でふだん支障なく過ごしている人がその後、日常生活に制限なく過ごせることが見込める期間を解析。危険因子の組み合わせによって、男女あわせて192通りの65歳健康寿命の数値を導き出した。

 いずれの危険因子もない人の65歳健康寿命は男性22.6歳、女性26.3歳。それぞれ87歳、91歳まで健康でいられる計算になる。

 逆に、収縮期血圧が160以上などの高血圧で、体格指数BMI(体重〈kg〉÷身長〈m〉÷身長〈m〉)が30以上の肥満、喫煙していて、糖尿病でもあるという人の65歳健康寿命は、男性12.9歳、女性16.2歳だった。

 危険因子がない人に比べ、それぞれ9.7年、10.1年短く、健康でいられる年齢はそれぞれ77歳、81歳までになる

 取り上げた危険因子は、どれも脳卒中や心筋梗塞(こうそく)などを発症する可能性を高める。脳卒中を起こして後遺症で自力での歩行が難しくなるなどして、健康寿命に差が生じることが考えられるという。危険因子の種類によって健康寿命への影響は異なり、最大のリスクとなるのは喫煙だった

「健康診断を欠かさずに」

 東京科学大の月野木ルミ教授は「日常生活を制限なく過ごせる期間に10年の差が生じれば、人生の質そのものが大きく違ってくる。高血圧や糖尿病などを防ぐため、定期的な健康診断を欠かさず受けてほしい」と呼びかける。

 これらの病気にかかっても、早めに見つけて治療を受けることで、脳卒中などの可能性は低くできる。

 高血圧や糖尿病などの発症には運動や食事といった生活習慣が関係しているが、本人にはどうにもできない遺伝などの影響も小さくないことが、最近は明らかになってきている。

 論文はこちら(https://doi.org/10.2188/jea.je20240298別ウインドウで開きます)。