「たばこのない未来」は実現するのか? 前進と後退を繰り返す世界

配信  Forbes https://news.yahoo.co.jp/articles/8004b1d494dd7b13d2df2ef19ebc827f85edf54d

世界保健機関(WHO)は、世界人口の約75%に当たる60億人以上が現在、たばこに対する課税強化や広告禁止、包装への警告表示、禁煙支援制度など、何らかのたばこ規制措置の対象となっていると報告した。

同機関によると、現在世界の喫煙人口は20%未満であり、2000年の32%超から減少している。喫煙者の8割は中所得国または低所得国に居住し、男性が多い。喫煙は依然として世界で最大の予防可能な死因となっている。

たばこの消費が減少傾向にあり、規制対策が一定数の国民に浸透したことから、一部の国では商業用たばこの使用を完全に廃止する方針が検討されている。また、喫煙者人口を5%以下に削減しようと、段階的に規制を強化しつつある国もある。だが、この種の対策のいくつかは既に失敗しており、たばこのない未来が本当に実現しつつあるのか、それとも見た目以上に遠い未来の話なのか、あるいは完全に達成不可能なのかという疑問を投げかけている。

ヒマラヤの国ブータンは、2004年にたばこの輸入と販売を禁止したことで、世界で初めて公式に禁煙国となった。ブータンは、国民総幸福量(GNH)の算出や国土の60%を森林として維持することを義務付けるなど、西洋諸国から称賛される独自の統治手法で知られるようになった。ところが、仏教の教えを理由にたばこ禁止を掲げたブータンでさえ、外部からの影響を免れなかった。同国は2020年の新型コロナウイルス流行時、感染の拡大を助長する密輸業者を阻止するため、たばこ禁止措置の大部分を撤廃した。それ以降、同国政府は禁煙条例を復活させておらず、代わりに禁煙教育に注力する方向へかじを切った。なぜなら、禁煙条例は実際には喫煙率を低下させず、むしろ違法に入手可能な警告表示のないたばこが出回ったからだ。

近年では、ニュージーランドが2027年から、2009年以降に生まれた人が合法的にたばこを購入できないようにするなどの禁煙対策を予定していた。同国の手法は突然の禁止ではなく段階的な廃止という方針だったが、その有効性は試されることなく撤回された。政権交代により、2022年に制定された法律が廃止されたためだ。この法律は広く国民の支持を得ていた。2023年に政権を掌握した保守連立政権は、右派ポピュリスト政党であるニュージーランド・ファースト党の要請を受けて方針を転換したとみられている。新政権による減税措置は、たばこ税で賄うとされた。これは、たばこの段階的廃止に関するもう1つの懸念事項、つまり、公的医療費の削減によって相殺されると予想されるにもかかわらず、予防にかかる費用と短期的な税収の損失を浮き彫りにしている。

だが、英国では現在、同様の禁止措置の導入が検討されている。この措置はまだ施行されていないが、現時点では政府と国民の支持を得ている。

■禁煙国家は実現できるのか?

それでもなお、ニュージーランド政府は禁煙国家の実現に引き続き取り組む姿勢を示している。ポルトガル、カナダ、オーストラリアなども同様の目標を設定しており、今後515年以内に喫煙者の割合を5%以下に抑えることを目指している。例えば、欧州連合(EU)はこの期限を2040年に設定している。この目標に近づくための一般的な対策として、レストランのテラス席やビーチ、公園、自然保護区、さらには都心部の路上といった公共の屋外空間での喫煙を制限することが挙げられる。前述の国々を含む世界の複数の国は既にこうした措置を導入している。

都市レベルでもこうした動きが見られる。今年初めにはイタリア北部ミラノでコスタリカの法律に類似した、他人の近くでの喫煙を禁じる条例が施行され、広く報道された。フランスも71日から規制を強化したが、屋外飲食エリアの禁煙は除外された。これは、公衆衛生の擁護派と、自由な生活様式選択の支持派、そして政府の短期的な歳入考慮という三者間の綱引きの中で、新たな争点となっている。