喫煙が最大リスクの認知度の低い病気とは(COPD)/医療ジャーナリスト安達純子
配信 日刊スポーツ https://news.yahoo.co.jp/articles/a43b82950bdd74e784c1cf3d70136c4ad2804461
がんだけじゃない、誤嚥や感染症でも命に関わる~肺を守ろう!<17>
肺を守るには、細菌やウイルスのみならず、有害化学物質をなるべく吸い込まないようにすることも重要になる。
中でも、喫煙は肺の病気の慢性閉塞(へいそく)性肺疾患(COPD)との関係が深い。日本ではCOPDで年間1万6000人以上が亡くなり、そのうち約1万4000人は男性である(厚労省2024年「人口動態統計」)。
「喫煙はCOPDの最大の危険因子です。喫煙者は非喫煙者と比べてCOPDの死亡率が約10倍も高いと報告されています。加熱式タバコや電子タバコが、紙巻きたばこよりもリスクが低いという証拠もありません」と、公益財団法人結核予防会 複十字病院呼吸不全管理センター長の木村弘医師(日本医科大学客員教授)は警鐘を鳴らす。
国内の喫煙者は10年間で男女とも有意に減少したが、40代~50代の男性の喫煙者は30%以上で高い割合のままだ(厚生労働省2023年「国民健康・栄養調査」)。ニコチン依存症に対する禁煙補助薬や禁煙治療もあるが活用できない人がいる。加えて喫煙によるCOPDの認知度も低い。「COPD認知度把握調査」(GOLD日本委員会)の24年12月の調査結果では、COPD認知度は約33%だった。認知度が低いため、息切れなどの症状が続いても受診しない人がいると考えられている。
「国内の大規模な疫学調査研究『NICEスタディ』の結果は、40歳以上のCOPD推定患者数は約530万人。しかし、厚労省の患者調査による推計患者数は約20万人。未診断の潜在COPDが多く、放置することによる症状悪化が懸念されます」と木村医師は話す。
配信 日刊スポーツ https://news.yahoo.co.jp/articles/2caeb5972def8973275bee34ce887962f3a3571f
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肺は酸素と二酸化炭素のガス交換を行う大切な臓器だが、加齢とともに機能が低下するという。
「呼吸機能検査のスパイロメトリーで、最大限に息を吸い込んだ後、可能な限りすべてを吐き出した際の1秒間に吐き出せる空気の量である『1秒量』は、男性の場合、23~25歳でピークを迎え、以降、年平均で20ml減少します」と、元日本呼吸器学会会長の公益財団法人結核予防会 複十字病院呼吸不全管理センター長の木村弘医師が解説する。
加齢に伴う肺機能の低下に拍車をかけるのが肺の病気だ。中でも、生活習慣病と位置づけられ、喫煙を最大リスク要因とする慢性閉塞(へいそく)性肺疾患(COPD)になると、1秒量が年平均で60ml以上も減るという。
「COPDは息を早く吐くことができなくなります。そのため、思い切り強く息を吐ききった空気の全体量(肺活量)で1秒量を割る『1秒率』の数値が70%未満になると、COPDの疑いが強くなります」(木村医師)
COPDで息を早く吐けないと、たとえば、小走りしただけでも、激しい息切れに見舞われるようなことが起こる。だが、リモートワークなどでほとんど体を動かさないでいると、息切れに気づきにくい。また、「年のせいの息切れ」と思うことも…。
「40歳以上で喫煙歴があり、風邪などの呼吸器感染症を繰り返し、せきや痰(たん)、ゼーゼーという呼吸時の喘鳴(ぜんめい)、少し体を動かしただけでも息切れがしやすいときには、COPDの疑いがあります。禁煙すると同時に、呼吸器内科で肺に異常がないか検査を受けることが大切です」と木村医師はアドバイスする。
配信 日刊スポーツ https://news.yahoo.co.jp/articles/8ccbcc7bb9179b2280f094dfbe96b32335b81281
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国内では約530万人の患者数が推定されている慢性閉塞(へいそく)性肺疾患(COPD)になると、体を少し動かしただけでも息切れが生じやすくなる。このとき肺はどうなっているのか。
「空気の通り道の気管支の先は、細気管支が小枝のように伸び、ガス交換の小さい房の肺胞へとつながっています。COPDは細気管支の内腔が狭くなり、気流障害を引き起こすのです」と、公益財団法人結核予防会 複十字病院呼吸不全管理センター長の木村弘医師(奈良県立医科大学名誉教授)は説明する。
「気流障害を起こすと同時に、肺胞の壁が壊れることで肺胞と肺胞の間の血管へのガス交換が難しくなります。これが肺気腫であり、COPDの病態のひとつです」(木村医師)。
COPDでは、炎症によって細気管支の壁が厚くなった結果、内腔が狭くなり空気の通りが悪くなる。また、肺気腫により、肺が縮もうとする本来の力(弾性収縮力)が弱くなるため、細気管支を外向きに引っ張ろうとする力も低下し、さらに空気の通りが悪くなるという。
体を動かしたときに呼吸が速くなると、吸った空気を吐き出す前にさらに新たな空気が入ってくるため、肺がこれまで以上に膨らんで苦しくなる。
「ガス交換がうまくいかないと、血中の酸素不足を補おうとして心臓から肺への血流も増えます。心臓に負荷がかかり、肺の血管(肺動脈)にも強い圧力がかかることで肺高血圧にもつながります。COPDの細気管支障害や肺気腫は、他の病気を合併するリスクも高めるので注意が必要です」と木村医師は話す。
配信 日刊スポーツ https://news.yahoo.co.jp/articles/94ee7ac49e2c158b21ad6e405f2b11a3c18c0cd4
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喫煙が最大原因の慢性閉塞(へいそく)性肺疾患(COPD)は、肺の末梢(まっしょう)の細気管支障害や肺胞障害が起こり、空気の流れが悪くなる。そんな呼吸の状態を知るため、スパイロメトリーという医療機器を用いた検査が人間ドックや健康診断でも活用されている。
息を吸ったり吐いたりしてスパイロメーターで呼吸の状態を調べ、空気を吸ったときの最大吸気量から、最大限に吐く努力をしたときの空気の流れ(流速)と、肺の大きさで示される(フローボリューム曲線)。
「COPDでは、速いスピードで空気を吐くことが難しく、肺に空気が残るので1秒間で吐き出せる数値が低くなります。一方、間質性肺炎(肺線維症)は、肺が硬くなるために空気を吸ったときから吐き切るまでの量(肺活量)が小さくなります」と、元日本呼吸器学会会長の公益財団法人結核予防会 複十字病院呼吸不全管理センター長の木村弘医師が解説する。
間質性肺炎は、ガス交換を行う肺胞の壁(間質)が、炎症で厚く硬くなってうまく機能しなくなる病気だ。原因はいろいろあり、その原因によって治療も異なるが、国内では間質性肺炎で年間2万4000人以上が亡くなっている(厚労省2024年「人口動態統計」)。
「COPDと間質性肺炎が合併しているケースも珍しいことではありません。2つの症状が合わさった結果、スパイログラムが正常に見えることもあります。健康診断などで肺の機能異常が疑われ、息切れ、せき、痰(たん)などの症状があるときには、呼吸器内科の専門医の診断を受けることをお勧めします」と木村医師はアドバイスする。
配信 日刊スポーツ https://news.yahoo.co.jp/articles/a819602f5ac1e0d486123849637781cc82639ff0
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人間ドックや健康診断の呼吸器機能検査では、息を吸ったり吐いたりして測定するスパイロメトリーという検査が行われている。普通に吸って吐く息の量や、目いっぱい吸って吐く努力性肺活量などを調べる。
「慢性閉塞(へいそく)性肺疾患(COPD)では、息を吐き切れなくなり肺に空気がたまります。この『空気の捉え込み現象』をエアートラッピングといいます。スパイロメトリーでは、エア-トラッピング指数(5%未満が正常)も測定できます」とは、公益財団法人結核予防会 複十字病院呼吸不全管理センター長の木村弘医師(日本医科大学客員教授)。長年、COPDなどの診断・治療・研究を行う。
「COPDは、体を動かして呼吸が速くなったときに、肺に空気がどんどんたまって肺が膨らむ『動的肺過膨張』も特徴です」(木村医師)
吸った空気に対して吐く息の量が少ないと肺に空気がたまる。新たに空気を吸おうとしても十分な量を得にくくなる。たとえば、小走りしたときには呼吸の回数が増える。しかし、COPDでは、空気を吐き切る前に次の呼気で空気を吸わなくてはならず、肺が空気でどんどん膨らみ息を吸えなくなる。これを動的肺過膨張という。
「動的肺過膨張の息切れは、気管支を広げる気管支拡張薬で軽減が可能です。通常は、抗コリン薬やβ刺激薬を用いた吸入療法を行います。また、COPDの最大原因は喫煙ですが、低出生体重で小児期の肺の発育障害の人も、中高年でのCOPDのリスクが高くなると世界的に指摘されています。せきや痰(たん)、息切れなど、呼吸器の異常は放置しないようにしましょう」と木村医師は話す。
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長期にわたる喫煙によって肺の気流が滞る慢性閉塞(へいそく)性肺疾患(COPD)は、生活習慣病に位置づけられ、さまざまな病気と関係する。そのひとつが、慢性心不全。
「COPDは、肺から空気を出すことが難しくなり、肺が空気で膨らむ動的肺過膨張を起こすと、心臓にも大きな負荷がかかります。心臓の血液を全身に送り出す左心室の壁が厚く硬くなって、心臓の広がる力が弱くなる慢性心不全(HFpEF/ヘフペフ)も合併しやすくなります」と、元日本呼吸器学会会長の公益財団法人結核予防会 複十字病院呼吸不全管理センター長の木村弘医師は話す。
ヘフペフになると心臓へ送られる血液量が減り、死亡率も高くなるといわれる。一方、COPDも肺のガス交換が難しくなるため、国内では年間1万6000人以上が亡くなっている。
「COPDは放置している人の割合が高い。COPDの治療薬・気管支拡張薬で動的肺過膨張が抑制されると、ヘフペフは改善します。COPDの早期治療で合併症も改善・予防が可能といえます」(木村医師)。
COPDの症状の特徴は、体を動かしたときの息切れだが、早期段階では「運動不足」「年のせい」などと考えてしまいがち。一方、ヘフペフも、むくみや倦怠(けんたい)感はあるものの、強い症状が出るわけではないので自覚症状に乏しい。結果として、COPDと合併したヘフペフが重症化に至るケースもあるという。
「合併症を起こしやすいCOPDのような病気は、早い段階での治療が他の病気を防ぐためにも大切なことを知っていただきたいと思います」と木村医師は話す。
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季節の変わり目は、ハウスダストなどで気管支ぜんそくを起こしやすい時期でもある。気管支ぜんそくは、慢性的な炎症が気管支に起こって気道が狭くなり、ゼーゼーという喘鳴(ぜんめい)を特徴とした呼吸器の病気だ。小児ぜんそくは知名度が高いが、大人になってから呼吸困難を伴う激しいぜんそく発作に見舞われるケースもある。
「気管支ぜんそくは、かつては、繰り返す呼吸困難のために亡くなる人が多かったのですが、吸入ステロイド剤などの開発で死亡率は減少しました。2019年には、重症の気管支ぜんそくに対する治療薬として生物学的製剤『デュピルマブ』が承認され、症状改善に役立っています」とは、公益財団法人結核予防会 複十字病院呼吸不全管理センター長の木村弘医師(奈良県立医科大学名誉教授)。
「『デュピルマブ』は、アトピー性皮膚炎や慢性副鼻腔(びくう)炎など、炎症を伴うさまざまな病気の治療薬として承認を得ています。2025年3月には、これまでの治療によって効果が不十分な慢性閉塞(へいそく)性肺疾患(COPD)の治療薬としても承認されました」(木村医師)。
デュピルマブは、炎症に関わる物質(インターロイキン-4やインターロイキン-13)の作用を防ぐ働きがあり、従来の治療薬・経口ステロイドが止められない重症患者の一部で用いられる。たとえば、既存の治療薬でも改善しなかった重症のアトピー性皮膚炎では、半年で正常の皮膚を取り戻せるほどの効果が、デュピルマブで報告されている。この薬が、喫煙を最大原因とする肺の病気・COPDの治療薬になったのだ。
「COPDの患者さんからは『壊れた肺は治らないでしょ』とよくいわれますが、新たな薬の開発で症状が著明に改善する患者さんもいらっしゃいます。ぜひ早期発見と早期治療を心がけていただきたいと思います」と木村医師は話す。