2025年5月16日 2:00 日経MJ https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGM283P70Y5A420C2000000/
【シドニー】オーストラリアは4月から、たばこ1本1本に健康の警告表示を掲載し始めた。喫煙者にたばこが健康に与える影響を啓発する狙いだ。高い税金により、たばこの小売価格は上昇しており、違法に輸入された闇たばこが社会問題になっている。
「吸う度に毒される」――。4月1日から、製造業者にそんな警告文を1本1本のたばこに表示することが義務づけられた。小売店は6月末に警告文のないたばこの在庫を一掃する必要がある。同様の取り組みは2023年に世界で初めて導入したカナダが先行する。
豪州ではたばこは高価だ。20本入りの紙巻きたばこ「マールボロ」は1箱約38〜58豪ドル(約3500〜5300円)。7割は国の税収入となる。現状、1本あたり約1.4豪ドルの税が課され、たばこによる年間歳入はおよそ100億豪ドルに達する。
近年、社会問題となっているのがたばこの密輸だ。中東やアジアから違法に輸入され、1箱10〜20豪ドルと安値で闇市場に出回る。ギャングや犯罪組織が暗躍しているとされ、税収の減少も招いている。
犯罪組織が街の小売店に闇たばこをこっそり販売するように圧力をかけ、断った店に放火するといった被害も広がっている。事態の深刻化を受けて、3月には豪公共放送ABCが「豪州のたばこ戦争」と題して問題を特集した。
密輸には日本人が関わる例もある。在日豪州大使館によると、24年7月に日本人9人が合計33万本を超えるたばこを無申告で豪州に持ち込もうとして観光ビザを取り消された。再入国が最大3年間禁止されるなど、重い代償を払うことになる。
4月1日からたばこ1本1本に警告を表示することが義務付けられた=AAP
・2023.08.02 たばこ一本一本に警告文、新法施行 カナダ(AFP)
・2024.05.02 カナダが「エグいタバコ警告表示」を実施(yahoo 石田雅彦)