狭まる大阪の「喫煙空間」飲食店8割超が規制対象に 屋内禁煙条例、4月1日全面施行

配信 産経 https://news.yahoo.co.jp/articles/b375e6821616760952db4f5dbeec04a15f91d4da

大阪・関西万博の開幕を控え、大阪府内で客席面積30平方メートル超の飲食店を原則屋内禁煙とする府受動喫煙防止条例が41日に全面施行される。これまで喫煙できた30平方メートル超~100平方メートル以下の約4千店も、禁煙化や喫煙室を設けないと罰則が課される。これで府内の飲食店計約10万店のうち8割超が規制対象となるが、大阪市では1月から全域で路上喫煙を禁止。街中の喫煙所が「まだ少ない」との声もあり、行き場を失う愛煙家の動向が注視される。

府条例は平成31年(2019年)3月に制定され、客席面積30平方メートル超の飲食店で屋内喫煙を原則禁じた。健康増進法と同様、経過措置として100平方メートル以下の居酒屋や喫茶店などは届け出をすれば喫煙を認めていたが、来月以降、30平方メートル超の店は全面禁煙化するか、喫煙専用室を設ける必要がある。違反した店は過料5万円以下、喫煙した人も過料3万円以下が課される。

■売り上げ3割減

 経過措置の間、府は喫煙室設置の負担を軽減するため、国の助成金と合わせ経費(上限300万円)の4分の3を支援する補助金を創設した。しかし府は今年度、575件分の補助金枠を用意しながら申請は213件(24日現在)。府の担当者は「喫煙室の設置費用は4分の1が自己負担なので、多くの店は禁煙化を選ぶのでは」と話す。

店の禁煙化に踏み切るにも、悩ましいのが売り上げへの影響だ。大阪・北新地のオイスターバー「ザ・パーティー」は昨年4月に一足早く禁煙化すると、売り上げが約3割も落ち込んだ。シェフの岸本清吾さん(67)は「北新地は酒とたばこがセットのような街。禁煙化で特に団体客が来なくなった」と話す。昨年9月に喫煙ブースを設置し、売り上げは回復傾向にあるが、「まだ100%元に戻ったわけではない」と訴える。

■こっそり一服?

規制拡大の影響がとりわけ大きいのが大阪市内。今年127日から市内全域の路上喫煙を禁止し、店外で一服すれば指導員から過料千円を徴収される。市は300カ所超の指定喫煙所を整備したが、すでに路上全面禁煙を導入する東京都千代田区や大阪府四條畷市などと異なり、市域が広大で喫煙所のないエリアも目立つ。府飲食業生活衛生同業組合の中村実事務局長は「大半の店の近くに指定喫煙所がないのに、店先での喫煙まで禁じられては立ちいかない」と苦言を呈する。

同組合では2月、喫煙室を設ける資金的余裕のない飲食店が多いなどとして、府に条例の全面施行の延期を求める意見書を提出したが、行政側に考慮する気配はない。中村さんは「新型コロナウイルス禍の酒類提供と同様、条例を守らない店が潤い、守る店が損をするような状況が生まれかねない」と懸念を示す。

東京都ではすでに従業員のいる飲食店を面積に関係なく原則禁煙とするが、大阪も万博を機に喫煙者の行き場が一気に狭まる。バーなど30平方メートル以下の約15千店は今後も喫煙できるものの、たばこ行政に詳しい関係者は「店で違反をすれば(過料は)万単位なのに、路上喫煙なら千円。4月以降、路上での『こっそり一服』が増えるのでは」と話している。

■禁煙化店、大阪も全国も6割超

大阪府内で禁煙化された飲食店は、令和6年(2024年)度の府の実態調査で約64%と、ここ5年で15ポイントほど増えている。厚生労働省研究班の調査でも、全国の飲食店の禁煙化は約63%(512月時点)と同様の傾向を示す。2年(2020年)に全面施行された改正健康増進法は飲食店を原則禁煙とするが、小規模店の喫煙を認める例外規定も残り、禁煙化がさらに浸透するかは不透明だ。

2(2020年)4月に全面施行された同法では、飲食店などを原則屋内禁煙とする一方、経過措置として既存の客席面積100平方メートル以下の店の喫煙を認める。また、米や麵(めん)類などの主食を提供しない「喫煙目的施設」に登録した場合も喫煙できる。

同法の全面施行に伴い、府は無作為に抽出した飲食店2万店を毎年度調査。まとめによると、全面禁煙と答えた店は2年度は498%だったが、3年度は603%に増えた。6年度には644%にまで上昇し、一定の禁煙化が進む。

 一方、同法の全面施行前から続く既存店と施行後に開店した新規店計52万店余りを対象に厚労省研究班が実施した調査でも、512月の時点で禁煙は632%だった。ただ、法施行後の開店で全店が禁煙化されるはずの新規店も禁煙は803%。研究班は、喫煙目的施設の一部が本来禁じられる主食を提供していると推測されるなどとし、「法令順守が不十分である可能性がある」と指摘。より実効性のある法整備を求めている。(以下略)