下野新聞:【健康増進法改正5年】屋内禁煙へ規制強化を
2025/6/5 https://www.shimotsuke.co.jp/articles/-/1124958
受動喫煙防止に向けて、県が制度化した「とちぎ禁煙推進店」の登録件数が伸び悩んでいる。ここ数年は横ばいだったが、2024年度に初めて減少に転じて691店となった。
20年に改正健康増進法が全面施行され、屋内は原則禁煙となった。しかし改正法には例外規定や抜け道も多い。喫煙できる飲食店が散見されるのは、このためでもある。
改正法は、施行から5年後の見直し規定を盛り込んでいる。ちょうど5年がたった。国は規制強化で抜け道をふさぐべきだ。県は登録制度をさらに広めるとともに、国を待たずとも原則禁煙に近づける条例制定を検討してほしい。
県の登録制度は、対象に飲食店のほか小売店、宿泊施設、保健・医療・福祉施設などが含まれる。登録数伸び悩みの原因とされるのが、改正法施行前から営業し、かつ客席面積100平方メートル以下の小規模飲食店は屋内喫煙を可能とするなどの例外規定である。 このほか「喫煙を主たる目的とするバーやスナック」という項目もある。たばこを対面販売する、米飯など主食を販売しないなどのいくつかの条件を満たせば「喫煙目的店」として、飲食店でも喫煙できる。厚生労働省によると、23年末時点で禁煙の飲食店は全国で約6割にとどまる。
こうした中、大阪府は大阪・関西万博開催を機に法を上回る独自の受動喫煙防止条例を制定し、4月から全面施行した。客席面積が30平方メートル超は原則屋内禁煙である。現行法の100平方メートル超に比べ、かなり厳しくなった。
同時に公衆喫煙所を設置する民間事業者へ、経費の半分を補助する制度も新設した。基準上限額は屋外は700万円、屋内は300万円。補助額は現行法を上回る。複数の事業者が共同設置する場合でも対象となる。本県も参考にしてはどうか。
普及が進む加熱式たばこの受動喫煙によるリスクが軽視されているという、識者の意見もある。対策を進めたい。飲食店経営者は、店内で長時間たばこの煙にさらされる従業員の健康を考えてほしい。
厚労省によると、国民の喫煙率は23年の調査で15・7%。この10年間、男女とも低下傾向にある。喫煙による健康被害リスクをさらに周知し、受動喫煙被害のない社会に向けて官民それぞれが取り組みを強化するべきだ。