(5)

ぼくは、お母さんと一緒に、おっちゃんの大好きなイカ焼きとタコ焼きをさし入れにいった。
病院には、おばあちゃんが付き添いにきていた。

「おっちゃん、熱っつあつのイカ焼きとタコ焼きもってきたで、一緒に食べよ。」

おっちゃんは、ふとんをかぶってベッドにうずくまっていた。

「ああ…ひろきか。ようきてくれたな…。
今、胸がむかついて、何も食べられへんねん、ワルイなあ… ひろき、おっちゃんの分まで食べてええで。」

おっちゃんは、ふとんからちょっと顔をのぞかせて、それだけ言うとまたすぐふとんの中にうずくまってしまった。

・・ むかつくのは抗ガン剤の副作用のせいや ・・
と、お母さんとおばあちゃんが後で話していたけど…。

それを知りながら、おばあちゃんは言った。
「なんでもええから、しっかり食べて、体力つけや。」

お母さんも明るく元気な声で、
「きれいな看護婦さんに囲まれて幸福やろうけど、はよ退院せなあかんで。」
と茶化して言うとみんな笑った。

「おっちゃん、はよ元気になってな、またくるからな。」
そう言ってへやを出た時、笑いながらも、おばあちゃんとお母さんの目は涙ぐんでいた。

<ぬ く >