おっちゃんが『肺ガン』だとわかってから、もう六ヵ月がたった。
夏休みもあと十日ばかりで終ろうとしている。
「おっちゃん、聞こえてるか…ひろきやで。」 閉じていたおっちゃんの目が、ゆっくりあいた。
「はよ元気になって、旅行連れてってな。 ぼく、こづかいためて、待ってんねんで。 約束破ったら神さま怒りはるからな。 ぜったい、ぜったい、約束やで。」 おっちゃんは、ゆっくりぼくの方に目をむけ、笑いながらコクンとうなづいた。
……間……
それから数日後 ・・・
おっちゃんは、静かに息をひきとった。
八月三十一日、夏休み最後の夜やった。
<ゆっくりとぬく >