(8)

おっちゃんが『肺ガン』だとわかってから、もう六ヵ月がたった。

夏休みもあと十日ばかりで終ろうとしている。

「おっちゃん、聞こえてるか…ひろきやで。」

閉じていたおっちゃんの目が、ゆっくりあいた。

「はよ元気になって、旅行連れてってな。
ぼく、こづかいためて、待ってんねんで。
約束破ったら神さま怒りはるからな。
ぜったい、ぜったい、約束やで。」

おっちゃんは、ゆっくりぼくの方に目をむけ、笑いながらコクンとうなづいた。

……間……

それから数日後 ・・・

……間……

おっちゃんは、静かに息をひきとった。

八月三十一日、夏休み最後の夜やった。

<ゆっくりとぬく >