(14)

その時です。

「脳みそくん、脳みそくん。」

と、小さな声がしました。

「だれだろう?」

脳みそくんは、耳をすませました。その声は、お母さんのおなかの中から聞こえてきました。

「きみは、だれだい?」

と、脳みそくんが聞きました。

「ぼくは、お母さんのおなかの中にいる赤ちゃんだよ。脳みそくんにお願いがあるんだ。ぼくもタバコの毒で、苦しんでいるんだよ。

 ぼくのお母さん、ぼくがおなかの中にいるのに、お付き合いとかなんとか言って、ときどきタバコを吸うんだ。そのたびにぼくは息ができなくなったり、栄養がこなくって、死にそうになるんだ。

 ぼくたちの仲間は、タバコの毒で死んでしまったり、早く生まれたり、病気をもって生まれたりして、一生苦しんで生活しなければならないこともあるんだ。

 それに、たとえお母さんがタバコを吸わなくっても、周りで吸われると、ぼくのところまで毒が来て、苦しいんだよ。

 生まれてくるぼくたちを守るために、

どうかタバコを吸わないで! 

周りでもどうかタバコを吸わないで!

お願いです。」

と、赤ちゃんが言いました。