本会は,以下の至急要請を提出しました。
2006年1月11日
内閣総理大臣 様
総務省(消防庁) 御中
厚生労働省 御中
NPO法人「子どもに無煙環境を」推進協議会
会長 若林 明
〒540ー0004
大阪市中央区玉造1-21-1-702
グループホームが全焼:入所の高齢者7人が死亡(2006/1/8,長崎)の事例を教訓に
認知症や介護施設入所者の発火元所持(喫煙)の
禁止措置等の法整備をお願いします
2006年1月8日に長崎県大村市のグループホームで起きた火災では,
http://kyushu.yomiuri.co.jp/news/ne_06010902.htm
(最終行に続報記載)
読売新聞1/9によれば,
(1)施設内は禁煙だが,入所者の中には喫煙者がおり(2人),施設長が注意す
ることもあったという。
(2)大村消防署長は「たばこの火の不始末の可能性もある」と話しており,警察と
消防で原因を調べている。
(3)9人の入所者は,日常生活で介助を必要とする人が多く,つえなどに頼らず,
自力で歩行できたのは3人だけだった。
(4)施設はオール電化で,ガスコンロや石油ストーブは使わず,暖房も空調で,
火の気はなかった。
朝日新聞1/9によれば,
(5)認知症の高齢者が共同生活をしていた
(6)建物内は禁煙で,屋外のデッキなどでの喫煙を指導していた
(7)これまではケアの質ばかりを考え,防災は二の次だった
(長崎県の認知症高齢者グループホーム協議会長)
(8)総務省消防庁係長「今後の調査を踏まえ,グループホームの防災対策を検討
する必要がある」
【要請内容と理由】
1.
入所者の喫煙が原因と思われる,このような痛ましい火災焼死事故は,予見され
ていたことでした。
複数が暮らすオール電化の施設で,認知症などの入所者の喫煙を認める(屋外で
あっても)ということは,他の入所者や近隣を巻き添えにする火災・類焼のリスクが
大きいので,間違っています。
発火するものは入所時に没収すべきで,それを入所の条件にすべきです。
2.
施設では,「タバコを持ち込まず,喫煙させず」を入居の条件にしている所も少なくな
く,入居時にきちんと説明すれば問題ないようです。
例えば,日本ロングライフ株式会社の施設では,グループホームだけではなく,他の
高齢者の施設もすべて,入居者も従業員もすべて喫煙をしないことを条件にしていま
す。
「安全に吸わせる」という選択肢を用意している施設では,今回のような痛ましい悲劇
は,ありうることです。
(屋外に喫煙所を設けても,今回のように厳寒の折,屋内で吸うことはありえます)
表面上,喫煙者の喫煙要求が強いと,ケアする側は,タバコを吸わせることがその人
の意志を尊重することであるかのように,勘違いしやすいのですが,実はそれは,ニコ
チン依存症のなせる業です。
タバコから遠ざけ,離脱の時期を過ぎれば,一般に喫煙者は,タバコのことを忘
れて,精神的にも,非常に穏やかに過ごすことができます。(専門医の指摘)
3.
たとえ屋外であっても,室内に煙が流れたり,吸った後の喫煙者の吐く息に含まれる有
害物質により,他の入居者への受動喫煙の被害も甚大です。
また,いったん火災が起きれば,周りの人を巻き込んで,生きる権利を奪うことに
なるわけですから,それは,明らかに生存権という基本的人権の侵害になります。
4.
喫煙は,喫煙者の自己責任という言もありますが,認知症患者や介護の必要な人は
自己責任を負うことが出来ない状態が殆どと考えられますので,安全に吸わせるこ
とを禁止するために,
主治医意見書に,「喫煙を厳禁しないと火事の危険が否めない」と書かれた患者
さんからは,発火元であるタバコ・ライター・マッチ類を施設側は没収することを義
務づける制度を確立することが,このような火災焼死を二度と起こさないために不可
欠です。
5.
加えて,施設内の受動喫煙防止のためにも,入所者の禁煙厳守(発火元没収)だ
けでなく,施設敷地内の禁煙の義務づけが必要です。
(そのためには,職員への受動喫煙防止の周知・教育・研修の義務化を盛り込むこと
が必要です) → 下記参考資料ごらんください
6.
以上,入所者や,近隣の人々が喫煙による火災に巻き込まれることを抜本的に
防止するために,法規制によるしっかりした禁煙規則の徹底が必要ですので,
総務省(消防庁)と厚生労働省など関係省庁で協議の上,至急の対処と法制化・
法整備をお願いいたします。
参考:認知証高齢者グループホーム等に係る防火安全対策の指導について(平成18年1月10日)
「認知症高齢者グループホーム等における防火安全対策検討会」の発足(平成18年1月17日)
(消防庁HP)
5の参考資料:大谷美津子「介護現場における各種の喫煙問題」(世論時報平成18年1月号掲載)
補充1 グループホームは全国に7,604カ所あるとのことです
補充2 同じような指摘が→ 防災対策でもっとも大事なことは、禁煙である
補充3 長崎新聞「声」 入所施設での喫煙は禁止に(長崎県平戸市 賀來 俊,2006.1.21)
続報 以下の報道を見ると,事はかなり危険を含んだ状況にあるようです。
抜本的対策を採らないと,今後も同じようなことが起こり得るのでは。
入所者の喫煙、常態化?大村の施設火災から1週間 防火対策の徹底模索
西日本新聞 06/01/15
http://www.nishinippon.co.jp/media/news/news-today/20060115/morning_news001.html
入所者七人が死亡した長崎県大村市の高齢者グループホーム「やすらぎの里さくら館」
の火災から十五日で一週間。施設は全館禁煙だったが、施設職員が同県警の調べに「火災
前日の七日を含め、入所者がたばこを吸っているのをたびたび注意していた」と証言して
いることが分かった。たばこの不始末が原因との見方も浮上する一方で、同じように夜勤
を一人しか置けないグループホームは「火を出さないことが一番の対策」と防火対策の徹
底を模索している。
「個室でたばこを吸う入所者に職員が何度も注意した」「吸うときは外で吸うように指
導していた」―。同県警の事情聴取に、施設職員はこのように証言したという。火元と特
定した居間からはライターの燃えかすも発見。たばこを吸う入所者の対応に苦慮していた
可能性が出てきた。
たばこの始末は他の施設にとっても悩みの種。しかし、同県の福祉関係者によると「家
庭同様の生活の場」という理念から、全面禁煙とするのは困難なのが実情。大村市の別の
ホームも「普段はたばこを預かり、職員が付き添って喫煙させる」という原則を再確認す
るにとどまった。
強制力をもつ禁煙が難しいだけに「防火が最大の課題」との声は強まる。
火災から五日後の十三日、同県西海市のグループホーム「わらび苑」は、「夜勤が一人
になる午前一時、台所から出火した」との想定で緊急の避難訓練を行った。職員が自宅か
ら駆けつけ、入所者を窓から運び出すシーンも。一人を外に誘導するのに最低三分。渡辺
登理事長(58)は「九人のお年寄りを職員一人で避難させるのは百パーセント無理」と
実感した。
だが、夜勤者の増員は経営上困難。近隣住民との協力体制を探る動きも出始めている
が、建設コストなどからホーム自体が山間部に設置される場合も多い。
防火にどう備えるか。出火時、どう対応するか。各施設でも、なお模索が続いている。
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