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タバコ業界からの政治献金の実態調査(第四報)(2010〜2015年)
2014.11.28掲載
タバコ業界からの政治献金の実態について (2010〜2012年調査) 日本禁煙学会 タバコ業界からの政治献金調査プロジェクト 【目的】 ・政治家や政党へ政治献金がなされ、政治資金規正法により、総務省や都道府県の選挙管理委員会に報告することが義務付けられ、3年間の政治資金収支報告書が上記のそれらのホームページに掲載されている。 ・タバコ業界も各政治連盟などを通して献金や寄附をしており、それが我が国のタバコ対策の進展を阻害している可能性が考えられているが、その実態を調査し明らかにした報告はないようで、今回公表されている3年間のデータの入手し、集計し、解析を試みた。 (2014.10までに;2013年の政治資金収支報告書が2014/11/28に公表されたが、この解析結果は後日に紹介します。) 【方法】 ・総務省、及び都道府県の選挙管理委員会のホームページに掲載されている、全国たばこ販売政治連盟・全国たばこ耕作者政治連盟、及び各都道府県支部の2010〜12年の政治資金収支報告書(1件5万円以上が報告を義務付け)を閲覧し、タバコの販売政治連盟及び耕作者政治連盟の収支の概要を集計した。 ・また政治家及び政党・政治資金団体へのタバコ業界からの献金集計を試みた。(これについては対象政治家及び政党支部・政治資金管理団体・関係政治団体が多く、また献金者名の記載がない場合も少なくないなどで、集計額は実際よりかなり少なくならざるを得なかったように思われる) ・集計は、販売及び耕作別に、また各々ブロック・都道府県の支部別データを合算したが、不明のデータも少なくなかった。 【結果1】 ・収支報告書では、2010〜2012年の全国たばこ販売政治連盟の支出額は(表1)、 概ね各々2.9、2.2、2.8千万円(その年の収入もほぼ同額に近い)で、 支部合計の支出額は、概ね各々5.0、3.7、4.8千万円(同上)で、 これらの3年間の合計は21.4千万円、年平均は7.1千万円であった。 ・2010〜12年の全国たばこ耕作者政治連盟の支出額は(表1)、 概ね各々3.2、4.3、2.6千万円で、 支部合計の支出額は、概ね各々7.6、7.9、5.3千万円で、 これらの3年間の合計は31.0千万円、年平均は10.3千万円であった。 ・以上の全国たばこ販売及び耕作者政治連盟の 3年間の支出総合計は52.4千万円、年平均は17.5千万円で、 いずれも国政選挙年に多いようであった(2010年7月に参議院選挙、2012年12月に衆議院選挙)。 【結果2】 ・これら政治連盟から議員(全てが自民党で、多くが国会議員)及び自民党(他党の記載はなし)への献金額は2010〜2012年では(表2)、概ね各々1.3、0.9、2.0千万円で、 3年間の合計は4.1千万円、年平均は1.4千万円で、 (ただ、不明な点も少なくないので、これ以下ではない、の表現が正しいかも) いずれも国政選挙年に多かった(2010年7月に参議院選挙、2012年12月に衆議院選挙)。 【結果3】 ・これら政治連盟から自民党議員(殆ど国会議員)への献金は(表3)、 3年間の累計で、議員数108人、合計金額は2.8千万円で、 100万円を超える国会議員(いずれも自民党)が複数いた。 (ただ、不明な点も少なくないので、これ以下ではない、の表現が正しいかも) (政治家及び政治資金団体側の報告書では、献金元の明記は殆どなかった) なお、自民党以外の他党の議員への献金記載はなかった。 ・これらの国会議員のなかには、自民党のタバコ特別部会所属の議員(タバコ族議員)が多数含まれていた。 【考察】 ・政治資金収支報告書で見る限り、タバコ販売及び耕作の政治連盟の年間支出合計の平均は少なくとも1.7億円前後であった。 ・ただ収支報告書では、タバコ販売及び耕作政治連盟の各本部と支部の間で資金交付や上納があるなど複雑な流れの部分があるようで判明に至らないところや不明が少なくなく、収支が正確に記載されていないような可能性も考えられた。(現在、領収書等を開示請求している) ・議員パーティについて20万円以内は報告の義務付けがなく、またタバコ産業や労組などからの献金の有無については把握出来ず、政治献金の全容を明らかにするには至っていない。 ・タバコの販売本数や販売額が漸減していっているにも関わらず、タバコ税率上げなどで反対勢力が政党及び国会議員を動かす政治力としては、献金以外に 党費納入、選挙動員協力など があると思われるが、全容解明に継続調査したい。 ・結果2と3に示したように、タバコ販売及び耕作の政治連盟から、タバコ族議員(及び政党)に献金がされているが、タバコ及び受動喫煙が国民の健康を害し、病気と早死の原因になっていることが医学的・科学的に明らかにされていることからして、国民の健康や福祉の増進施策を負託されている国会議員たるものは、タバコに関わる業界から献金や物的人的援助を受けるべきでなく、タバコ規制枠組条約(WHO-FCTC)第5条3項のガイドラインでもその旨が指摘されている*(下記に抜粋引用)。(業界・企業・団体等からの政治献金については法的規制が望まれる) *WHO たばこ規制枠組条約第5条3項の実施のためのガイドライン 抜粋 「たばこ規制に関する公衆衛生政策をたばこ産業の商業上及び他の既存の利益から保護すること」 http://www.mhlw.go.jp/topics/tobacco/dl/fctc_5-3_guideline_120506.pdf (4) 政府関係者や職員における利益相反を避ける。 勧告 4.10 締約国は、政府又は準政府機関の関係者又は職員がたばこ産業から金銭又は現物による報酬、贈与又はサービスを受け取ることを許してはならない。 4.11 国内法及び憲法原則を考慮し、締約国はたばこ産業又はその利益促進を図っている組織から、政党、候補者、選挙運動に対する献金を阻止する又は当該献金を全面的に開示することを義務付ける効果的な措置を講じるべきである。 (6)「企業の社会責任」と称される活動等を含め、たばこ産業による「社会的責任」と称する活動を非正規化し、可能な範囲で規制する。 勧告 6.4 締約国は、政府又は公共セクターの政治、社会、経済、教育、あるいは地域関連等のいかなる部門に対しても、たばこ産業又はたばこ産業の利益の増進のために活動している者から献金を受け取ることを許可してはならない。(法律又は法的拘束力・強制力がある協定によって合法的に合意又は定められている補償金を除く) 《この調査報告は、2014/11/16の第8回日本禁煙学会学術総会(沖縄)で発表した。》 この件の連絡・問い合わせ先 muen@silver.ocn.ne.jp |