どうなる岡山の受動喫煙条例 医師らが問題視する点とは

2020年1月8日16時11分 朝日 https://digital.asahi.com/articles/ASMDR56DDMDRPPZB00P.html

 

 受動喫煙の被害を防ぐため、岡山県が昨年末に公表した条例の素案に、県医師会などが反発している。医師らが問題視するポイントは何か。これに対する県の見解は――。経緯をふまえ論点を整理した。県は16日まで素案へのパブリックコメントを募っている

 

 受動喫煙対策を強化した改正健康増進法の全面施行を4月に控え、県医師会などが作る「県受動喫煙防止推進協議会」は昨秋、県内有権者の2%を超す約3万6千人分の署名を添え、条例制定を求める要望書を県に提出した。有権者数2%は、地方自治法により、住民が条例制定を直接請求できる人数だ。

 これを受け、県は昨年11月21日に条例の骨子案を発表。協議会は「法の内容とほぼ変わらない上、現状から後退する内容を含み、不十分」として要望書の再提出を決議し、伊原木隆太知事と蓮岡靖之県議会議長、全県議に送った。

 県は昨年12月17日、骨子案の内容とほぼ変わらない条例素案を公表した。

 素案では、改正健康増進法に県独自の上乗せとして、従業員がいる小規模飲食店での「喫煙専用室設置」を努力義務として求める。それ以外では、学校や病院での屋外喫煙所設置を容認▽公園や駅前広場など公共性の高い場所では「周囲の状況に配慮」のみ――など法の規定通りとする。

 協議会側が要望した、学校や病院などでの敷地内全面禁煙▽飲食店の全面禁煙▽公共性が高い場所の禁煙――は盛り込まれなかった。素案に対し「すでに敷地内全面禁煙にしている病院など一部施設では後退になる」「小規模飲食店の従業員の健康を守るのに不十分」などと反発している。

 県の見解はどうか。保健福祉部はまず大前提として「個人にはたばこを吸う権利があり、条例はその権利を制限するもの。内容は慎重であるべきだ」。その上で「国の改正法に上乗せし従業員がいる小規模飲食店に対する努力義務を課した」と説明する。

 改正法とほぼ同じ内容、との指摘に対しては「国はさまざまな立場の意見がある中で現在出来うる最善の『落としどころ』として法を改正した。それを県が大きく踏み越えることは出来ない」と答える。

 また、すでに敷地内完全禁煙を実施している施設が新たに屋外喫煙所を設けるなどの後退は「まずないだろう」とし、公園など公共の場所では「法が定める範囲でしっかりと指導監督していき、環境を改善していく」と強調する。

 

生存権」こそ優先を

 県の条例素案を読んで、強い違和感をおぼえた。

 冒頭に掲げる条例の目的と基本理念に「健康で快適な生活」という言葉が繰り返し出てくるのだ。受動喫煙を「快適な生活を妨げるもの」と捉えていることを示している。

 しかし、受動喫煙は「不快」だから問題なのではない。「危険」なのだ。副流煙は多くの有害物質を含み、周囲の人に危害を加えることが証明されている。

 協議会の緊急集会では、医師が「患者や妊婦が屋外喫煙所の横で息を止めている。かわいそうでならない」。肺がん患者は「煙が怖い。残念な外出しかできない」と強く訴えた。

 県が大前提とする「たばこを吸う権利」と、生命を脅かされず安全に暮らせる「生存権」。どちらを優先すべきか、明らかだ。

 この点について県は及び腰で「法は、喫煙者に周囲への配慮を求めている」と言うにとどまる。

 なぜなのか。誰かに遠慮しているのか。率直に尋ねると、県保健福祉部の則安俊昭参与は「長年、社会が許容してきた習慣を急に厳しく制限すると反発が強まり、結果的に、喫煙率低下を含めたたばこ対策全体が進まなくなる恐れがある」と苦衷を語った。

 「条例で国の法を踏み越えるのを差し控える」という県の姿勢も疑問だ。

 東京都大阪府兵庫県など各地で条例を設け、広島県では遊具のある公園などの禁煙を求めるなど、多くは法より厳しい規定を置く。国の至らない部分を、地域の実情や理念に基づいて補完するのが、地方自治体の役目ではないのか。

 県は、県民の健康と安全に暮らす権利を守る責務がある。今春の改正法全面施行後、晴れの国・岡山の「きれいな空気」は実現するか。「法の範囲でしっかりと監督指導する」という県の覚悟を見極めたい。

     ◇

 〈改正健康増進法と受動喫煙〉 改正健康増進法(2018年成立、20年4月全面施行)では、①学校や病院での敷地内禁煙(屋外喫煙場所は設置可)②事務所や小規模以外の飲食店は原則屋内禁煙だが、経営判断で喫煙専用室を設けることができる。小規模店に限り、店内喫煙可にできる③公園など公共の場所では「周囲の状況に配慮」④加熱式たばこも規制対象に含める⑤違反すると50万円以下の過料――と定めている。また、喫煙可能な飲食店は入り口に掲示が必要。

 

写真・図版 JR岡山駅前広場の指定喫煙所。ついたてもなく、信号待ちで立ち止まる多くの歩行者が煙にさらされる

 

受動喫煙対策 独自条例で意見公募 岡山県、1月16日まで

2019年12月26日 13時23分  山陽新聞 https://www.sanyonews.jp/article/970960

 岡山県は、受動喫煙対策の強化に向けてまとめた独自条例の素案に対するパブリックコメント(意見公募)を受け付けている。来年1月16日まで。

 来年4月に全面施行される改正健康増進法では、小規模飲食店は例外的に喫煙が認められている。素案は小規模飲食店であっても、従業員を雇う場合はフロア全体を喫煙可能とせず、喫煙室と禁煙室を仕切るよう努力義務を課すのが柱

 このほか、県民の責務として「他人に受動喫煙を生じさせることがないように努める」と規定し、事業者には「受動喫煙を防止するために必要な環境の整備」を要請。県は「防止施策を推進する」としている。

 素案は県健康推進課ホームページ(HP)をはじめ、県庁本庁舎、各県民局、各地域事務所などで閲覧できる。意見はHPの専用フォームや電子メール、ファクス、郵送で受け付けている。

 独自条例を巡っては、県医師会などでつくる協議会がより厳しい規制を求めて内容を見直すよう要望書を伊原木隆太知事と全県議に提出している。

受動喫煙防止の条例案は不十分 医師会などが批判 岡山


2019年12月13日14時44分  朝日 https://digital.asahi.com/articles/ASMDD23ZBMDDPPZB001.html

 岡山県医師会などでつくる県受動喫煙防止推進協議会は12日、県医師会館三木記念ホール(岡山市北区)で緊急集会を開いた。県がまとめた受動喫煙防止の条例骨子案について、「非喫煙者の健康を守る」目的を果たすには不十分な内容だとし、要望書を再び提出することを決議した。

 来夏の東京五輪パラリンピックに向け、国際オリンピック委員会世界保健機関が求める「たばこのない五輪」実現のため、国は2018年に健康増進法を改正。事務所や工場、小規模以外の飲食店など多くの人が集まる施設を原則屋内禁煙とし、加熱式たばこも規制対象に含めるなど受動喫煙対策を強化した。

 20年4月からの全面施行を前に、県は受動喫煙防止の条例を制定する方針を決め、準備を進めている。協議会は、児童・生徒がいる学校や、健康弱者が集まる病院などでの敷地内全面禁煙▽飲食店での屋内全面禁煙▽公園や駅前広場など公共性が高い場所の禁煙――などを求める要望書を今年9月、県内有権者の2%を超す約3万6千人分の署名とともに県に提出していた。

 県が11月21日に公表した骨子案は、学校や病院での屋外喫煙所設置を容認▽従業員がいる小規模飲食店での「全面喫煙可」回避を求めているが、努力義務にとどまる▽公共性の高い場所の喫煙には言及がない――などとしている。

 この日の集会には約60人が参加。協議会の清水信義代表世話人が県の骨子案を説明し、「すでに敷地内全面禁煙に踏み切っている病院など一部施設にとっては後退した内容になる」と話した。

 参加者からは一様に「残念な内容でがっかりだ」「怒りを通り越し、むなしさを感じる」「飲食店の喫煙では、罰則を設けた東京都や、原則全面禁煙を求める大阪府などと比べ、著しく見劣りがする」などの声が上がった。

 大原利憲・岡山済生会総合病院名誉院長は「骨子案はほぼ法律のまま。言い回しをちょっと変えてやり過ごそうという意図が透けて見える」と批判した。

 県医師会は、前回の要望に「改善指導に従わない施設は名前の公表を検討」などの項目を新たに加えた再要望書案を提示。満場一致で決議した。近く、知事と県議会議長、全県議に送る。

 清水代表世話人は「今まで健康会議で県と討議してきた内容がほとんど反映されていない。このまま条例になるなら将来に禍根を残す。例外規定が多く緩い、との批判もある国の法律よりもっと進んだ内容にして欲しい」と話した。

 

岡山)受動喫煙防止、小規模飲食店の一部も対象に


2019年11月23日03時00分 朝日 https://digital.asahi.com/articles/ASMCP3JWJMCPPPZB00D.html

 

 県は、たばこの煙から周囲の人の健康を守る受動喫煙対策のために検討していた条例の骨子案を発表した。来年4月に全面施行される改正健康増進法では不十分として、規制対象から外れた小規模飲食店の一部を対象としている。県医師会の協議会が求めていた、学校などの敷地内や飲食店の屋内の全面禁煙化は盛り込まれていない
 骨子案では、従業員が働く客室面積100平方メートル以下で、個人や中小企業が営む既存の小規模飲食店に対し「屋内の全部を喫煙可能室と定めないよう努める」と規定。改正健康増進法では「従業員が自らの意思で受動喫煙を避けることができない」として、屋内を「全面喫煙可能室」とはせず、喫煙室を設けて分煙化したり、全面禁煙にしたりするように促す。

 ただ民間事業者への影響を考慮し、罰則規定は設けず努力義務とする。伊原木隆太知事は21日、「改正法が十分であれば条例は必要ない。自分の健康に悪いと思う方が、受動喫煙せざるを得ない状況を改善しないといけない」と述べた。県は条例案をまとめたうえで、パブリックコメントで県民から意見を聞き、制定を目指す。

 

参考:2019.11.21 小規模飲食店 禁煙対策努力義務に 岡山県が独自条例骨子案(山陽新聞

編者注:これを起案した健康おかやま21推進会議」にはJTが委員として入っている。元々まともな骨子案ができるものでないのでは…
      http://www.pref.okayama.jp/uploaded/life/636376_5481345_misc.pdf