配信 CNN https://news.yahoo.co.jp/articles/9d806c383f351619ee0648e8676ea90f83db5c2e
ニューヨーク(CNN
Business) ロシアのプーチン大統領がウクライナでの戦争に踏み切った時、大手企業1000社以上がロシアからの撤退を約束した。しかし一部のよく知られる企業に対して、開戦から500日が経過した現在に至っても自社の約束を守っていないとの非難の声が上がっている。
米エール大学のジェフ・ソネンフェルド教授は、ここまでの前例のない企業の流出を記録してきた。同教授のチームが名指しで非難したところによると、一部の企業はロシアからの撤退もしくは少なくとも同国での業務を大幅に縮小するとした自分たちの約束を破っているのが実情だという。当該の企業には欧州ビール大手ハイネケンや英蘭系日用品大手ユニリーバ、米たばこ大手フィリップ・モリス、米食品大手モンデリーズといった知名度の高い企業が含まれる。
CNNにより独占的に共有されたエール大学の調査は、内部告発者や現地にいる専門家、ロシア国内で活動する学生の情報、会社資料、メディア報道に基づいてまとめたもの。
ソネンフェルド氏はCNNのインタビューに答え、「これらの企業は自らの約束を反故(ほご)にし、戦時に不当な利益を上げている」「失望を通り越して恥ずべき行いであり、道義に反する」と糾弾する。
同氏によればこれらの企業は法律こそ犯していないものの、ロシアにとどまることで道徳的規範を破り、同時に「自らのブランドも毀損(きそん)している」という。
「消費者が自覚するべきなのは、こうした企業への支持を通じ、自分たちがプーチンの戦争機構を強化する仕組みを是認しているという点だ」(ソネンフェルド氏)
ロシアのウクライナ侵攻から1カ月後の昨年3月、ハイネケンはロシアからの撤退を約束したが、エール大学によるとそれから16カ月が経過した現在も、同社はロシア国内で7つの醸造所を運営、1800人を雇用している。
そればかりかロシア国内で新ブランドを立ち上げ、他の主要銘柄が去った市場のシェアを大幅に拡大したという。
一方、ハイネケンの広報担当者はCNNへの声明で、ウクライナでの戦争を「人類にとってひどい悲劇」と形容。社として「ロシアからの撤退に尽力している」と強調した。既にロシア国内ではハイネケンのブランドの販売を止めており、ロシア事業の有望な買い手も見つけてあるという。ただ実現する可能性のある契約は、今年4月にロシア当局に提出したもののまだ承認待ちの状況だとした。
「ハイネケン社にとって相当な財務上の損失を見込んでいる。現地事業を継続しているのは、経営破綻(はたん)や国有化を避けることで社員の生活を守るためだ」と、同社は声明で述べた。
オレオなどの菓子ブランドを展開するモンデリーズは昨年3月、必須ではないロシアでの活動については全て縮小し、「基本的な商品の供給」に事業を絞ると約束していた。しかし同社は依然としてロシア国内で3000人を雇用し、エール大学の調査によると「撤退に向けた進展を示す具体的な兆候もなく」、ロシアでの事業を継続しているという。
モンデリーズに対しては、欧州の食料品店などの企業から製品の発注や在庫を拒絶するボイコット運動も起きている。
同社はコメントの要請に応じなかったが、先月の声明でロシアでの活動の規模を縮小したこと、商品発売と広告への支出を停止したことを明らかにしていた。
ユニリーバはロシア向けの商品を「生活必需品」に限定すると約束したが、ソネンフェルド氏のチームによると、現在もアイスクリームや他の一般消費財を販売している。
ユニリーバにコメントを求めたところ、同社は2月に発表した声明に言及した。そこではウクライナでの戦争をロシア国家による残虐行為として非難し続ける一方、ロシアからの事業の撤退は、資産の政府への引き渡しや従業員への不利益を避ける形で進めるのが容易ではないと説明した。
フィリップモリスは昨年、ロシア撤退に向けて努力していると述べていた。それでも同社は現在ロシアに残る最大の多国籍企業の一つであり、複数の工場を含め25億ドル(約3500億円)相当の資産を国内に持っていると推定される。エール大学の調査が明らかにした。
CNNへの声明で同社の広報担当者は、「状況は複雑」であり、最近のロシア国内の規制のため活動に制約があると述べた。具体的にはあらゆる資産売却の手続きについて、当局からの承認を得なくてはならないといった条件が設定されていると説明した。国際的な規制に起因する制約もあるとしている。
日本たばこ産業(JT)の寺畠正道社長は7日までに共同通信のインタビューに応じ、2025年度末までに3千億円の投資を実行すると明らかにした。期間中に28カ国以上の市場に加熱式たばこを新規投入する。たばこは消費者の健康を害する恐れがあり「健康リスクの少ない、顧客に選んでもらえる商品を開発する」として、リスク情報も開示しながら事業の成長を目指すと強調した。
ロシアによる侵攻後に操業を停止していたウクライナのたばこ工場は「製造したいという従業員の希望が強い」ことから雇用を継続し、一部で操業を再開していると説明。一方、ロシアでの事業は売却も選択肢と表明しているが「できる限り継続していく」とした。
参考:2023.05.22 維新・松沢成文氏 JTロシア撤退を政府に要求(カナコロ)