2019/1/16(水) 17:49配信 日経ビジネス https://headlines.yahoo.co.jp/article?a=20190116-64150184-business-bus_all 関連180705 関連180412
「全席禁煙後も業績は好調に推移している」。居酒屋大手の串カツ田中ホールディングスの貫啓二社長は、16日13時に始まった決算説明会で、満足げにそう語った。
2018年11月期の連結決算は、16年に上場して以来、実質的な3期連続の増収増益(営業利益ベース)となった(17年11月期までは単独決算)。既存店売上高は前期比2.6%増だった。
今回の串カツ田中の決算は、発表前から多くの居酒屋チェーンの注目の的だった。同社は18年6月、200ほどある店舗のほぼ全てで「全席禁煙」に踏み切ったからだ。
20年4月に飲食店の店内での喫煙原則禁止を定めた改正健康増進法が施行されるが、串カツ田中の対応は法令で定めるより厳しい。「アイコス」など加熱式たばこも含めて全面的に喫煙を禁じ、喫煙ルームすら設けない徹底した対応をとった。
背景には串カツ田中の独自の出店戦略がある。同社の強みは、住宅街を中心に出店してファミリー層を囲い込むこと。そのため休日には、来店客の4割を家族客が占める。店内で喫煙を認めていることに対して、クレームが頻繁に寄せられるようになっていた。
日本たばこ産業(JT)の調査では、18年5月時点の日本人の喫煙率は17.9%。過去20年でほぼ半減した。しかし、居酒屋では客の3割近くを喫煙者が占めるとみられ、「全席禁煙は非常識と考えられてきた」(業界関係者)。そんな常識破りの全店全席禁煙が、居酒屋の業績にどう影響するのかが、注目されていたのだ。
禁煙断行から半年。「喫煙者の来店が減る一方で、家族客が増え、正味ではプラスになる」という貫社長のもくろみはおおむね的中した。既存店売上高は、禁煙を開始した18年6月には前年同月比97.1%と前年を割り込んだが、7月には101.9%に回復。直近の12月は同113.7%と2ケタ増になった。貫社長は、「正直に言えば胃がキリキリするような難しい決断だったが、踏み切ってよかった」と明かす。
18年6~11月の来店客の比率では、「会社員・男性グループ」の客が24.1%と前年同期比で7.0ポイント減少したのに対して、「家族」での来店客は20.8%と同7.5ポイント増えた。
アルコール類の注文が多い“サラリーマン客”が減ったため、18年6月以降、既存店の「客単価」は前年割れが続いている。その一方で、複数人で来店するファミリー層が増加し、既存店の「客数」はほぼ毎月前年を上回る。その結果、既存店売上高が押し上げられた。
貫社長は「喫煙率の減少は、この先さらに加速する。禁煙化による業績への悪影響は年々減っていく。5年後、10年後の成長を見通せば、家族客に安心して来てもらえる店づくりの方がはるかに重要だ」と力をこめる。
「ファミリーレストラン感覚」で来店する客が増えたため、「食事メニュー」の開発強化にも乗り出した。居酒屋とファミレスの両方のニーズを取り込める、“ファミリー居酒屋”業態で外食市場を深堀りしようとしている。