2019/6/14(金) 12:12配信 産経 https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20190614-00000538-san-soci
大阪高裁(大阪市北区)は来月1日から、大阪地裁や家裁などが入る合同庁舎の敷地内を全面禁煙とする。望まない受動喫煙の防止が目的。法的に認められている屋外喫煙所も置かず、「病院」や「学校」と同等の受動喫煙対策を進める。ただ、傍聴や裁判員候補として来庁する人の中には愛煙家も少なくない。高裁は「丁寧に説明する」と理解を求める方針だが、周辺での路上喫煙の増加を懸念する声もある。
■支部も対象へ
「敷地内の全面禁煙に御理解と御協力をお願いします」。6月以降、大阪高裁や地裁の出入り口でこうした掲示が始まった。
高裁は6月上旬、地裁や家裁などが入る合同庁舎を7月から敷地内全面禁煙とすると公表。庁舎内には現在、職員や来庁者が利用できる喫煙所が計5カ所あるが、いずれも6月末に閉鎖される。地裁の堺支部(堺市)や岸和田支部(大阪府岸和田市)など、府内にある関係施設も全面禁煙の対象となる。
背景には、7月1日から一部施行される改正健康増進法の存在がある。改正法では、受動喫煙の影響が大きい未成年らが利用する学校や病院に加え、役所などの行政機関を原則、敷地内禁煙とする「第1種施設」に指定。対して裁判所は飲食店や事務所などと同じ「第2種施設」とされ、屋内禁煙が基本となる。
同法は来年4月に全面施行される。だが第1種施設に関する取り組みは、今年7月から先行スタートする。最高裁はこれに合わせ、裁判所施設の受動喫煙対策を前倒しして行うよう各裁判所に促していた。
■屋外喫煙所も認めず
通知を受け、大阪高裁は対応を検討。法的に裁判所は屋内禁煙が原則となる第2種施設だが、「裁判所も第1種施設と同様の取り組みが必要と判断した」(高裁の担当者)といい、敷地内の全面禁煙を選択した。
ただ第1種施設でも、分煙を徹底するなどの条件を満たせば、屋外で喫煙所を設置することが認められている。しかし大阪府は3月、2025年大阪・関西万博の開催を見据え、「屋外喫煙所を設けないこと」を努力義務とした府受動喫煙防止条例を制定。大阪高裁も条例の趣旨に沿い、屋外での喫煙所は一切設けない方針だ。
■「世の流れ」「過度な規制」
名古屋高裁も7月から、管内(愛知、岐阜、三重、富山、石川、福井)のすべての裁判所で敷地内全面禁煙を導入する。受動喫煙対策が急速に進む昨今、裁判所施設の禁煙化の動きは加速するとみられる。
ただ、裁判の当事者や傍聴、裁判員候補などとして裁判所を訪れる人は多く、規制強化により、敷地外での路上喫煙やポイ捨ての増加などを懸念する声もある。大阪高裁の担当者は「一般の来庁者にはどこで吸ってくださいとは言えないが、理解していただけるよう丁寧に説明していく」と話す。
民事裁判の当事者として来庁した女性(36)は「公的な施設の全面禁煙は世の中の流れだと思う」と歓迎。一方、刑事裁判の傍聴に訪れていた男性(65)は「屋内の喫煙所廃止は理解できるが、屋外に1カ所設けるくらいはしてほしい。過度な自主規制に感じる」と訴えた。