「不快感もたらす可能性がある喫煙は禁止」分譲マンション新規約への評価は

2023/12/27 11:30  産経 https://www.sankei.com/article/20231227-C55DRXS23JKZLN6X2BLBJLH7FQ/?685659

 

集合住宅での喫煙について、兵庫県明石市の分譲マンションが今年3月、受動喫煙防止を義務付けるよう管理規約を改訂した。専有する居室内での喫煙であっても受動喫煙被害を与えることを禁止する先進的な内容だとして記事を書いたところ、今月、大津市内の分譲マンションの管理組合から一通のメールが届いた。

「管理規約(使用細則)にある禁煙に関しての内容を改めました。かなり進んだ内容になったと自負しております」

平成6年に建築され、総戸数257戸の14階建て。琵琶湖やスキー場に近いリゾートマンションで、自販機コーナーやスキー用具を乾かすための専用室、カヌー置き場も備える。

専有部分であっても

きっかけは、約3年前に大阪府内から12階に移り住んだ60代夫婦からの訴えだ。「退職後、空気がきれいで景色が良いところに住もうと思った」というが、階下からたばこの臭いが漂ってきて、ベランダに洗濯物を干すことはおろか、窓を開けることもできない。「窓を閉めていても通気口から入ってくる。朝、臭いで目が覚めることもあるんです」

注意を促す張り紙を掲示しても、事態は変わらなかったという。「直接の話し合いは避けたい」との訴えを受けて、管理組合は今年10月末に規約を改訂。従来、喫煙が禁止される場所は「エレベーターホール、屋内廊下等の禁煙場所」とのみ記載されていたが、建物共用部分や敷地内が禁煙であることを明記。さらに「専有部分内であっても近隣の住民に受動喫煙をさせたり臭い等による不快感をもたらしたりする喫煙。並びに、それらの可能性のある喫煙」も禁止した。

「『規約で禁止と定められているので、やめてほしい』と説明できるため、管理はしやすくなる」。年明けから受託する管理会社の担当者は、改訂を歓迎した。

具体的かつ説得的に

「直接の話し合いは避けたい」「できれば穏便に解決したい」。これは近隣トラブルに直面しそうになった多くの人が切望することではないだろうか。そもそもトラブルを未然に防止することに、管理規約の役割はある。

受動喫煙トラブルに詳しい岡本光樹弁護士は今回の規約について、「明確で分かりやすい」と評価する。

岡本弁護士によると、ベランダ喫煙による近隣への受動喫煙を不法行為とする判例はあるが、居室内喫煙で不法行為が明確に認められた例はない。喫煙する居住者の行動を話し合いによって変え、受動喫煙被害をなくすことができれば、それは裁判よりも望ましい解決策だと考える。

「規約は、喫煙する居住者に分かりやすく具体的に伝わること、説得力があることが重要だと思います」

岡本弁護士が評価するのは、専有部分が対象であることを明確にしている点。背景には、ベランダだけでなく、居室内での喫煙がトラブルになるという現実がある。

また、受動喫煙や不快感をもたらす喫煙にとどまらず、「それらの可能性のある喫煙」という広げ方も「興味深い」という。争いになった際、通常は被害者側が、煙や有害物質が自室に届いていることを示さなければならない。だが、この規定が、受動喫煙が生じないことを逆に喫煙者側が証明しなければならなくなる「立証責任の緩和」をもたらすとも考えられるからだ。

被害者が疲弊し、孤立するケースは後を絶たない。岡本弁護士は、行政の関与によって被害者の負担や孤立を軽減する必要があるとし、「管理規約に違反した喫煙に対し、法律や自治体の条例などで罰則を定めるべきだ」と訴える。

解決に導くのは住民の力

現状では、トラブル解決の成否は、管理組合や管理会社の意気込みや手腕によるところも大きい。

今年3月に規約を改訂した兵庫県明石市の分譲マンションで、受動喫煙被害を訴えた女性は、「受動喫煙をなくし、トラブルを解決していくのはマンションでいえば住民の力、広くいえば世論の力しかない」と実感を込める。

喫煙は肺がんやCOPD(慢性閉塞(へいそく)性肺疾患)だけでなく、虚血性心疾患や脳卒中、アルツハイマー型認知症などさまざまな病気による死亡との関連が指摘されている。さらに周囲の人にも深刻な健康被害をもたらす可能性があり、国内では年間約1万5千人が受動喫煙によるがんや脳卒中などで死亡しているとの推計もある。

できることなら喫煙する人は、自分や家族のためにも禁煙に挑戦してほしい。どうしても難しい場合も、第三者に受動喫煙被害を与えないようにしてほしい。大津市で被害を訴える夫婦は「喫煙をするなと言っているわけではない。他の住戸に煙がいかないようにしてほしい」と願っていた。

2023.05.25 受動喫煙防止、自室も制限 明石の分譲マンションで規約改訂産経、毎日

分譲マンション1階の掲示板に張り出された警告。受動喫煙被害がなくならず、管理組合が規約を改訂した=大津市
分譲マンション1階の掲示板に張り出された警告。受動喫煙被害がなくならず、管理組合が規約を改訂した=大津市