防衛財源目的の「たばこ税増税」で〝しれっと〟地方税も増収、年100億円超の副産物に

2025/4/5 産経 https://x.gd/EX0Lv 

令和7年度の税制改正では、防衛力強化に向けた財源額保のための増税のうち、たばこ税は8年4月から順次実施する方針が示された。加熱式たばこの税率を引き上げて紙巻きたばこと同じ水準にすることなどで、計画通り約2000億円の増収分を財源に充てる。ただし、これは国税のみの増収分だ。実は今回のたばこ税増税では〝しれっと〟地方税も100億円以上の増収が見込まれており、地方財源を増やす副産物を生んでいる。

財務省は増税による増収額を明記

紙巻きに比べて葉タバコの含有量が少ない加熱式にかかるたばこ税は、紙巻きに比べて1~3割ほど安い。政府は「同種・同等のものには同様の負担を求める消費課税の基本的考え方」との論理で、両たばこの税差の解消を決定。昨年末に財務省が示した7年度の税制改正大綱では、8年度に両たばこの税差を解消した上で、9年度から3年かけて紙巻きと加熱式の両方を1本当たり1・5円(年0・5円)引き上げることが明記された。この際、税差解消は国税と地方税のたばこ税を対象とし、1本当たりの税額引き上げは国税のみを対象とする旨が書かれている。

大綱では、一連のたばこ税の増税により、国税で年間2150億円の増収が見込まれると表記。これは、一連の増税が実施された12年度の国のたばこ税収見込み額(1兆1310億円)から、増税されなかった場合の見込み額(9160億円)を差し引いた金額となる。

財務省主税局によると、「増税による駆け込み需要などもカウントして試算している」といい、税差を解消する8年度に440億円、1本当たり0・5円増税される9年度に1170億円の増収を見込む。

地方税の増収の詳細記述なく

一方、地方税を所管する総務省も7年度の地方税制改正案を公表しているが、たばこ税増税についての詳細な記述はない。改正案の文書には注意書きとして、「※加熱式たばこについて、国たばこ税の見直しに伴い、地方たばこ税においても所要の見直しを行う」とたった2行の文章が表記されているだけだ。

具体的な記述がない理由について、総務省市町村税課は「地方税の主要な改正ではないため」と説明する。紙巻きと加熱式の税差解消による地方税の増収規模についても約112億円と試算しているにも関わらず、その数字については明記していない。

ちなみに税収の算出方法は国税と同様、地方税の場合は紙巻きと加熱式の税差解消がされた場合の税収見込み額(1兆385億円)から、解消されなかった場合の税収見込み額(1兆274億円)を差し引いた金額としている。

日本たばこ産業(JT)によると、紙巻きたばこ1箱(20本入り)580円のうち、税金が占める割合は61・7%(357・6円)。このうち消費税を除いた国・地方のたばこ税とたばこ特別税を含むトータルの「たばこ税」は約305円で、国税と地方税の負担割合はそれぞれ26・3%となる。

防衛財源目的の「たばこ税増税」で〝しれっと〟地方税も増収、年100億円超の副産物に