山形県:受動喫煙防止条例案に意見続出 県議会「性急だ」「支援必要」

2018年12月19日 11:08 山形新聞 http://yamagata-np.jp/news/201812/19/kj_2018121900370.php この後の関連ニュース

 

 県が制定を目指す県受動喫煙防止条例案について、県議会厚生環境常任委員会は18日、集中審査を行った。委員からは議論が性急との批判や、小規模飲食店への支援が必要との意見が相次いだ。19日の委員会採決で、最大会派の自民は付帯決議で飲食店への支援などを求めた上で、議案に賛成する構え。県は具体的な財政措置を検討する考えだ。

 同常任委は午前10時に開会し、担当部局の報告事項の説明後、委員長を除く委員7人が相次いで質問。関連質疑は約1時間半にわたった。

 県は7月末に関係者でつくる対策推進委員会を設置。協議の中で条例化が必要との意見が大勢を占め、条例案提出を決めた。これに対し、委員からは条例の中身が具体性を欠き、議論が煮詰まっていないとの意見が続出。野川政文委員(自民)は性急だと批判し、奥山誠治委員(同)は「(独自の受動喫煙防止)宣言があるのに、なぜ条例が必要なのか」と疑問を投げ掛けた。島津良平委員(同)は「(禁煙や原則屋内禁煙などとする)施設の分類が曖昧。現場で混乱するようなことがあってはならない」と指摘した。

 小規模な飲食店は受動喫煙防止のために施設改修を迫られ、経営状態を逼迫(ひっぱく)するとの懸念もある。「既存の飲食店などへの補助を考えては」(木村忠三委員・県政クラブ)、「一定程度、支援する考えが大切。それが県民への思いやりでは」(坂本貴美雄委員・自民)との意見に玉木康雄健康福祉部長は「取り組みを円滑に進める上で、財政上の措置も考えたい」と前向きな姿勢を強調した。

 質問は加熱式たばこの取り扱いにも及んだ。貝沼浩則健康づくり推進課長は、国が加熱式たばこの(影響など)科学的知見を明らかにしていないとし、「国の方針に沿い、県内の事業所の事情も踏まえながら対応を考えたい」と答えた。

 一方で佐藤昇委員(県政クラブ)、渡辺ゆり子委員(共産)は「宣言」から「条例」化に向けて踏み込む県の姿勢を評価。「健康長寿県を目指す上で意義が大きい」などと発言した。

 佐藤聡委員長は審議後、「喫煙者を排除するように見られることも、県民にとって良くない。誰もが納得して受動喫煙がなくなる条例にしていくことが重要」と話した。

 19日の委員会採決は委員長を除く7人で行われる。このうち4人が所属する自民は、既存の中小規模飲食店に対する助成制度を設けるなどの付帯決議を提出して賛成するとみられ、議案は可決される見通しとなっている。

条例内容―努力目標盛り、踏み込む

 県受動喫煙防止条例案は、基本理念や責務など15条で構成する。罰則は設けないが、学校や病院など公共施設では禁煙とし、屋外にも「喫煙場所を設けないよう努める」といった努力目標を盛り込んだ。客席面積100平方メートル以下で、個人や中小企業が経営する既存飲食店についても原則屋内禁煙などとし「望まない受動喫煙に自主的に取り組むよう努める」とした。いずれも7月に成立した改正健康増進法より踏み込んだ内容となっている。


 東京都や静岡県など5都県では条例が既に制定され、東京は違反の場合に科料を設けている。

 県は2015年2月、全国で初めて「やまがた受動喫煙防止宣言」を行った。県健康づくり推進課によると、啓発活動の強化などにより、県内の学校や保育園など多くの公共施設では敷地内、建物内禁煙が100%に達している。