(6) さて、カンガルー親子はというと、とても広々とした、パイナップル畑を散歩していました。
「ここはね、お母さんの一番お気に入りだった場所よ。空気がキレイで、パイナップルが一面になっていて、その真ん中に、どこまでも真っ直ぐに続く道が、くっきりとうかびあがっているのよ。そして風が、パイナップルの甘い香りを運んでくるの。 でも、今は、タバコのいやなニオイがムンムンしてるね。このままだと、パイナップルは息ができなくなって枯れてしまうわ。そんな悲しいことにならないように、毎日、毎日、少しずつでも、キレイにしておきましょうね。」
カンガルーのお母さんがこう言うと、おなかの袋に入っていた坊やが、元気よく飛び出してきました。
「お母さん、ぼくも手伝うよ。だってぼくも、まだ、お母さんのおなかの中にいたころから、パイナップルのあの甘い香りが、好きだったような気がするんだ。」
そう言って、道に落ちているタバコの吸いがらを、拾いはじめました。 「そうね。いっしょにキレイにしましょうね。」
お母さんカンガルーは、タバコの吸いがらを、拾い集め、おなかの袋の中に入れていきました。もちろん、坊やといっしょにです。
「こんな小さな子にまで、悲しい思いをさせるなんて…。」
お母さんカンガルーは、こう、つぶやいて、心で泣いていました。
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